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見方・考え方 > サントリーの持株会社から相続・事業承継のポイントを考える 2017.7.3

サントリーの持株会社を事例にして、相続・事業承継のポイントを考えてみましょう。
いろいろなポイントがありますが、以下の三つについて説明します。

◆株式保有特定会社に該当しないかどうかについて常に気をつける
◆含み益の37%控除も把握したうえで対策を検討する
◆故人・相続人の希望があれば寄附も選択肢とする


(1)サントリーの持株会社
まずは事例の紹介です。
サントリーグループには2つの持株会社があります。

・寿不動産(株)
創業家の資産管理会社と思われます。株主は創業家の個人などが中心です。下記のサントリーホールディングスの親会社でもあります。
・サントリーホールディングス(株)
酒類、飲料、食品事業を統括しています。傘下には320の事業会社があります。グループ唯一の上場企業「サントリー食品インターナショナル(株)」もここに含まれます。同社が保有するこれらの会社の株式時価総額は、有価証券報告書によると、なんと約1.3兆円です。

以上を図示してみます(有価証券報告書等からわかる範囲で作成しています)。


ここからは、上図A・B・Cの赤文字に注目します。
※ただし、以下サントリーに係る事実関係・相続事業承継対策の説明ではありません。
 

(2)A (非上場会社)
寿不動産もサントリホールディングスも非上場会社です。
したがって、これらの会社の株式の相続税評価額は、類似業種比準価額方式か純資産価額方式で算定します。
ところで、持株会社は「株式保有特定会社」に該当しやすいものです。そうすると、類似業種比準価額方式は一切使えず、純資産価額方式だけになります。
この事例の場合、純資産価額だけで評価すると、320の事業会社の高い株式時価が相当程度に反映されますので、類似業種比準価額よりもかなり高い評価になるでしょう。
(※)株式保有特定会社
次の割合が50%以上の会社をいいます。
(分母のうち株式の相続税評価額)÷(その会社の総資産の相続税評価額)

ここで相続・事業承継のポイントです。
◆株式保有特定会社に該当しないかどうかについて常に気をつける


(3)B 1956年の創業(第61期)
寿不動産は今から61年前に創業した会社です。
仮に創業当時にサントリホールディングスの株式(当時はサントリーホールディングスはありませんでしたので、その前身の会社ということになります)を取得したとすると、莫大な含み益になっていると思います。

たとえ、寿不動産の株式が純資産価額方式だけで評価されたとしても、含み益が大きいと37%控除の効果も大きくなり、相続税評価額をある程度抑えることができます。
寿不動産の含み益がどのくらいあるかはわかりませんが、同じ61年間を日経平均株価で見ると以下のとおりです。約40倍に値上がりしています。
・2017年…約20,000円   ・1956年…約500円


ここで相続・事業承継のポイントです。
◆含み益の37%控除も把握したうえで対策を検討する

(※)含み益
値上がり益のことです。例えば、法人が株式を100で取得した場合、貸借対照表に100と記載されます。その後その株式が例えば150に値上がりしても、売却などをせず保有している限りは100のままです。この例の場合、時価150、貸借対照表の記載100(これを帳簿価額といいます)ですから、含み益は50ということになります。
(※)37%控除
前述の例で続けます。実際に株式を150で売却した場合は、50円の利益が現実になります。ところで、その利益には法人税等が課されます(他の損益が黒字という前提)。したがって、手取りの利益は、50ではなく(50-法人税等)です。そこで、含み益のある資産は、単純にその価値で測るのではなく、税引き後の価値で測るほうが正しく評価できます。これが含み益の37%控除の理由です。なお、37%は法人税等の表面税率を意味します。


(4)C 公益財団法人など
公益財団法人が寿不動産の株主になっています。
これは過去において、創業家の個人に相続が発生し、相続人が相続した寿不動産の株式を、公益財団法人に寄附した結果だと思います。

相続した人が、相続した財産を、国・地方公共団体・公益財団法人に、相続税の申告期限までに、寄附した場合には、その寄附財産は相続税の課税対象としないという特例があります。この特例を相続した株式に適用すれば、相続税が非課税になると同時に、寄附を受けた団体はその会社の株主になるわけです。

ここで相続・事業承継のポイントです。
◆故人・相続人の希望があれば寄附も選択肢とする

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