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(※)これは類似業比準価額のしくみの基本説明を省略して書いた記事です。
(1)改正前・後の「比重割合の分数式」
改正前は、
配当 + 利益×3 + 純資産
5
でした。改正後は、
配当 + 利益 + 純資産
3
となります。
(2)改正の影響をまったく受けないケース
例えば、小売業(大分類)に属する上場会社の三要素の値は、配当4.0円、利益28円、純資産
226円(平成28年分)です。
もし評価すべき会社が小売業を営んでおり、三要素がこれと全く同じ値だったとすると、配当4.
0/4.0、利益28/28、純資産226/226、ですから、約分すると配当1、利益1、純資産1となり
ます。
まず、このような場合に改正がどう影響するかをみてみます。
改正前は、
1 + 1×3 + 1
5
となり、計算結果は「1」です。一方、改正後は、
1 + 1 + 1
3
ですから、やはり「1」です。
次に、評価すべきこの会社の三要素が上場会社よりもそれぞれ20倍高かったとします。つまり
約分後は配当20、利益20、純資産20です。
この場合、改正前は、
20 + 20×3 + 20
5
改正後は、
20 + 20 + 20
3
です。計算結果はいずれも「20」です。
以上から、三要素が上場会社に比べて高くても低くても、三要素が同値の関係だと改正の影響は
受けないことがわかります。この状態を「イーブンポイント」ということにします。そして、下
記(3)~(4)では、イーブンポイントの分数式における三要素の値を変化させてみてます。
(※)配当がゼロの場合
中小企業は利益があっても配当をしないことが珍しくありません。配当0の場合は、利益と純資
産が同値の関係ではなく2倍の関係、例えば利益1、純資産2、が改正の影響を受けないイーブン
ポイントです。
改正前なら、
0 + 1×3 + 2
5
改正後なら、
0 + 1 + 2
3
です。計算結果はいずれも「1」です。
(3)利益が高い会社
イーブンポイントの分数式の利益だけを大きくすると株価は下がります。
例えば、配当1、利益2、純資産1とすると、
改正前は、
1 + 2×3 + 1
5
となり、結果は「1.60」ですが、改正後は、
1 + 2 + 1
3
ですから、「1.33」に下がります。
したがって、利益が高い会社は株価が下がる可能性があります。ただし株価が下がるのは「利益
が単に高いのではなく、他の二要素に比べて相対的に高い会社」です。利益が高いゆえに配当も
純資産も同じくらい高いと、三要素が同値に近い関係になり改正の影響を受けにくくなります。
以上を踏まえて、利益が高い会社の社長さんには、例えば、
「利益の高い会社は改正により株価が下がる可能性があります。後継者への贈与のチャンスかも
しれません。もちろん利益が高くても他の二要素も同じくらい高ければ、改正の影響をあまり受
けなくなってしまいます。ですからこれを機に株価を試算してみてはいかがでしょうか」と、お
話しするのが的確だと思います。
(4)純資産が高い会社
イーブンポイントの分数式の純資産だけを大きくすると株価は上がります。
例えば、配当1、利益1、純資産2とすると、
改正前は、
1 + 1×3 + 2
5
となり、結果は「1.20」ですが、改正後は、
1 + 1 + 2
3
ですから、「1.33」に上がります。
したがって、純資産が高い会社は株価が上がってしまう可能性があります。ただし株価が上がっ
てしまうのは「純資産が単に高いのではなく、他の二要素に比べて相対的に高い会社」です。純
資産の高い会社は、利益も高く、よって配当も高いかもしれません。その場合は改正の影響をあ
まり受けません。
以上を踏まえて、純資産が高い会社の社長さんには、例えば、
「純資産の高い会社は株価が上がってしまう可能性があります。現状把握の見直しが必要になる
かもしれません。ただし純資産が高くても他の二要素も同じくらい高ければ、改正の影響をあま
り受けなくてすみます。ですからこれを機に株価を試算してみてはいかがでしょうか」と、お話
しするのが的確だと思います。